骨粗鬆症とは、骨強度が低下し
骨折のリスクが増大しやすくなる疾患と定義されています。
原因の70%は骨密度低下であり、骨密度低下の原因として
年齢・性別・食事や運動習慣・他の疾患など多岐にわたります。
日本での骨粗鬆症の患者さんは約1280万人で
全人口の約10%と非常に多い疾患です。
女性ホルモンと骨密度の関連性が強いため
閉経後の女性に特に多くなります。
50歳代の女性の10人に1人
60歳代の女性の3人に1人
70歳代の女性の2人に1人が骨粗鬆症であると言われており
女性にとっては身近な疾患です。
骨粗鬆症では全身の骨の強度が低下していくわけですが、
その際一番問題になるのは、普段は気がつかないものの
常に体重を支えている背骨(脊椎)や
大腿骨の骨折(代表的な骨折として、腰椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折)を引き起こし
それをきっかけに運動ができなくなり
寝たきりや認知症が加速度的に進むことです。
つまり、骨粗鬆症を適切に発見、治療しておかないと重大な骨折を起こし
健康寿命(元気に長生きする)を極端に短くしてしまうリスクが上がるため
ご自身の骨密度を把握し、治療が必要か検討しておくことは非常に大事です。
当院での骨密度検査は手のレントゲン撮影を行い、
骨の密度を測定することで行います。骨密度の測定以外の方法としては、
レントゲンでの脊椎骨折の有無などを確認する方法がありますが、
この場合は原則的に整形外科を受診して診断していただきます。
骨密度が一定以上低下している場合は、その程度に応じて治療の必要性を検討いたします。
一般的に骨密度が低下しているかどうかの判定は
同性の若年成人の平均骨密度(YAM)との比較することになります。
当院ではガイドラインに沿って、以下の基準で薬物治療の適応を決めております。
● 今までに腰椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折を起こした事がある場合、骨密度に関
係なく治療開始が推奨されています。
● 骨密度がYAMの80-90%の場合、骨粗鬆症予防の簡単な指導と経過観察が行わ
れます。
● 骨密度がYAMの70-80%の場合、以下が当てはまる患者さんに対しては薬物治
療が開始されます。そうでない場合は、
骨粗鬆症予防の簡単な指導と経過観察が行われます。
① 今までに脆弱性骨折(少し転んだ程度で骨折してしまった)を起こした事がある
② ご家族で大腿骨頸部やその周辺の骨折を起こした方がおられる
③ 骨折リスク評価ツール(FRAX)で10年間の骨折確率が15%以上
● 骨密度がYAMの70%以下の場合、原則的に薬物治療の適応となります。
当院では、治療開始時に患者さんの骨吸収
骨形成の程度を血液検査で確認するように努めております。
日内変動や腎機能の影響などを考慮して
骨吸収マーカーとしてTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ)
骨形成マーカーとして
P1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)を主に使用しています。
また、血液や尿中のカルシウム・リンなどの測定を行い
骨粗鬆症の原因疾患が無いか確認いたします。
ほとんどの患者さんでは骨吸収が亢進していることから
骨吸収を抑えるためにビスフォスフォネートもしくは
抗RANKLモノクローナル抗体という系統の薬剤を開始します。
骨吸収を抑えることによって
顎骨壊死という合併症を起こす事がまれにあります。
虫歯や歯科治療によって発症リスクが上がる事が分かっていますので
治療前に必要な歯科治療をできるだけ終わらせておき
治療中はマウスケアをしっかり行うことを推奨させていただいております。
また、このお薬を服用中に歯科治療を行われる場合は
治療前後でのお薬の中止が必要な場合がございますので
必ず事前にお知らせいただけますようお願いいたします。
女性の場合、閉経後早期に骨密度が低下し
比較的長期に渡って薬物治療が必要と考えられるケースでは
上記薬剤の代わりに選択的
エストロゲン受容体モジュレーター( SERM )
という薬剤をお勧めする場合がございます。
女性の骨粗鬆症の主要因として
閉経によるエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下がございますので
不足したエストロゲンの作用を賦活させる効果が期待できます。
静脈血栓症が起こりやすくなると報告がありますので
車椅子や寝たきりの患者さんには使用できません。
骨形成が低下している場合は
骨折の履歴がある場合や高度の骨密度低下がある場合
骨形成を増やすような薬剤を投与する場合があります。
また、カルシウム摂取不足が背景にあるような(負のカルシウムバランス)場合
カルシウム製剤や活性化ビタミンD製剤を処方する場合がございます。
いずれの場合でも
当院では定期的(約半年を目安)に血液
レントゲン検査を行い経過観察しながら治療を行ってまいります。
薬物治療と並行して大事なのは食事でのカルシウム
ビタミンKの摂取や日常的な運動習慣ですので
こちらに関しても適宜指導させていただきます。